僕は学生の頃、引越しをしてあらゆるところに別の住所を登録していた。たとえば、僕の住所が”○○県○○市○○1丁目ー1ー1 曙ハイツ201号室”だったとしよう。僕は住所をどこかに記入するたびに印をつけておいた。つまり、TSUTAYAだったら、曙ハイツ201A号室、学校関係だったら曙ハイツ201B号室、新聞だったら曙ハイツ201C号室、というようにだ。

このように住所を変えていても、郵便物等はほぼ間違いなく僕のとこに届く。だって僕の住むアパートに201はひとつしかないからだ。でも、僕の住所がどこかで流出したとしたら1発でわかる。なぜなら、僕はどこにどのような住所を登録しているかをちゃんと記録していたからだ。僕はいつ見知らぬ先から郵便物が届くのか楽しみにしていた。

ところが予想に反して、僕の住所が流出することはなかった。思ったよりも社会は健全なんだな、と思った。でも、ひとつだけ僕の罠にかかったところがある。テレビショッピングだ。僕が深夜番組を見ていたら空気ベッドが宣伝されていた。僕の家にはよく友達が泊まりに来ていたので、収納に便利で寝心地がよさそうな空気ベッドをかってもいいかなと思った。値段は9,800円と安くなかったが、まあいいかって感じで購入することにした。

某キー局のテレビショッピングから情報が流出するとは全然おもっていなかったが、いつもの癖で201Z号室としてベッドを申し込んだ。ベッドは予想より粗悪品だったが、想定の範囲内だったので、まあ良しとした。問題はその後だった。

「おめでとうございます!あなたはオーストラリアの宝くじに当選しています!」このような類の郵送物がひっきりなしに届くようになった。 それは例外なく「201Z号室」宛にだった。はは。なるほど。そういうことか。たしかにテレビショッピングでなんかを購入するようなやつは、やっぱり騙されやすいってわけだな。

結局のところ僕の知る限り住所が流出したのはそれだけだ。僕はキー局のテレビショッピングから情報が流出したときはおどろきだったが、同時に騙しやすそうな人の選択のうまさに対してはとても関心した。やはり騙される人は同じような人からおんなじように騙されているのだ。