少し前、まんだらけの万引き事件が話題になった。店の高額商品を万引きした犯人に対し、期日までに店に返さなければ、防犯カメラの顔写真を公開するとホームページで警告したのだ。期日までに犯人から連絡はなかったものの、警視庁から止めが入り顔写真の公開は見送りになった。その後、犯人は捕まり、事件は一応区切りがついた。だが、まんだらけの対応は話題になり、様々な議論を呼んだ。

僕に言わせると、顔写真の公開は、リベンジポルノとやっていることが同じであり、絶対に許されるべきでない

もちろん、店主の気持ちはわかる。店の貴重な商品を万引きされたら、たまったものではないし、万引きは立派な犯罪だ。そして、被害届けを出しても往々にして泣き寝入りする羽目になってまう。その怒りを考えると同情を禁じえない。なにもしないわけには行かなかったのだろう。

でも、だからといってこのような仕返しも許されるというわけにはいかないのだ。それはリベンジポルノがダメなのと同じ理由でだ。カップルで撮ったエロい写真や動画なんかを、別れた腹いせにネットで公開するのがリベンジポルノだ。それとこれとは話が違う、という意見もあるだろう。犯罪とカップルの離別は確かに別の話だ。では、彼氏に散々貢がせて、自分は浮気をしまくり、嘘をついて彼からお金をせびった挙句、一方的に関係を切った女性がいるとしよう。この女性ならリベンジポルノをされても仕方ないのだろうか。そもそも、リベンジポルノをされても仕方がないという基準なんてあるんだろうか。

暴力や刑罰は国家に独占されている。そのかわり国家は国民の厳しい監視の下で、その権力が制限されている。そして、刑罰とは、証拠をあつめて犯罪を立証し、第三者に判断をあおいで、初めて執行される。これが僕らの住んでいる世界のルールだ。公務員や裁判官の誰もが完全だとは言わないが、すくなくとも厳しい訓練やテストをパスしてきたプロであることは確かだ。僕らは、そのルールに則る以外のベータな方法はもちあわせていない。

そもそも、もし、それぞれ個人の判断で刑罰がくだされることが許されたとしたら、いったいどうなるか考えてみるべきだ。それぞれの判断はただしいのか、刑罰を下す方に嘘はないか、刑罰はその罪に値するか、そんなのを個人個人に委ねていたら、秩序を保つことなんてできない。個人は、ネットとという強い武器をもっている。そして、ネガティブな情報を公開して、広まりでもしたらもう取り返しがきかないのだ。

自分が何かの被害者になってできることは、警察に被害届けを出すか、加害者を裁判でうったえることだ。それ以上のことをしたら、逆に自分が名誉毀損等の加害者になるかもしれない。

念のため付け加えておくと、まんだらけの店主には、とてもポジティブな評価をしている。実際に画像は公開しなかったし、何より万引きで苦しんでいるという事と、その罪の重さが世の中に知れ渡ることに貢献したからだ。できれば、これをきにその手の犯罪が少なくなることを期待する。