かつてアルベール・カミュは「シーシュポスの神話」でこう言った。
真に重大な哲学上の問題はひとつしかない。 自殺ということだ。 人生が生きるに値するか否かを判断する、これが哲学の根本問題に答えることなのである。
今日、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの副センター長である笹井芳樹氏が亡くなった。自殺だそうだ。36歳という若さで京大教授に上り詰めた日本を代表する世界でも有数な科学者を、僕らは今日失ってしまった。彼は再生医療の研究で世界にとてつもない貢献ができたのかもしれない。とても残念だ。

原因ははっきりしてない。でも、僕はイジメが原因なんだと思う。メディアが社会が彼をいじめたからだ。STAP細胞の件では、もちろん一定の責任はある。その責任を負うのはプロとして当然だ。だが、彼を死に至らすほどに社会が責める必要はあったのだろうか。彼は本当に死ぬべき人間だったのだろうか。

笹井芳樹氏を自殺に追い込んだ社会を僕は嫌悪する。いじめていい、そう思った瞬間にみんなは袋叩きにする。イジメ問題は、あたかも全く非のない人間をいじめているように論じられるが、実際はそうではない。社会がが非のある人間をイジメていいという空気を醸成するのだ。そもそも非のない人間なんているのだろうか。

僕は、この社会が怖い。とても不条理だ。カミュが描いている不条理な社会は、実はいままさに実在するこの社会のことなのだ。