英語の会話とその意味をずっと聞き流していたら、いつのまにか聞き取れるようになって、やがて勝手に口から英語が飛び出てくるようになる、って話を信じてる人いますよね。そんなわけないですよ。ほとんどの人は、英語を聞き流してるだけでは、全くと言っていいほど上達しません。英語を上達させたかったら、泣く泣くがんばって勉強しましょう。

■ あなたは赤ちゃんじゃない

「赤ちゃんは聞き流しながら言語を学んだ。単純にそれと同じことをすればいい。」って言う人がいます。でも、あなたは赤ちゃんじゃないですよね。あなたは既に日本語という言語体系を身につけました。言語体系をまだもたない赤ちゃんと同じことをしようとしても同じ結果にはなりませんよ。理由は二つあります。

第一に、 大人は日本語として音を認識する能力を身につけてしまっているからです。僕らは無意識に音を何かの文字に当てはめています。つまり、全ての音を一番近いひらがなやカタカナで認識しようとします。たとえば、"light"と"right"ですね。英語では違う音ですが、日本語では両方"ライト"と認識します。これはラに近い音はラと認識するように僕らの認識能力が体系化されたからです。そういう体系がなければ音の認識は無限に存在してしまいますからね。そして、どうしても日本語の音に当てはめられない音は雑音として処理されてしまうんです。

その点、赤ちゃんは違います。 赤ちゃんは最初、わけのわからない音をだしますよね。ブーだかバーだかよくわからないような音です。彼らにはいかなる言語体系ももっていません。したがって、英語圏で育てば英語の言語体系が身につき、日本で育てば日本語の言語体系を身に付けます。ただし、一旦その言語体系を身につけると、その身に付いた体系に基づいて音を処理してしまいます。言葉を覚えるとは、ある言語体系に基づいて音を処理するということなんですから。ですので、あなたは赤ちゃんと同じように言語を学ぶことはできません。

第二に、大人は赤ちゃんのような言語の学び方ができないからです。赤ちゃんは、パパーとかママーとか最初に言いますよね。そうすると、両親から喜ばれます。パパだよーっとか言われたりして。しだいに、ママ、ごはん、とか言ったりしします。その度に、褒められたり、笑われたり、します。なんども間違えたり、同じようなことを言ったり、しながら言葉を学んでいきます。あなたは、もう一回そんなことできますか?できませんよね。赤ちゃんは恥の概念を覚える前に言語を学んでます。それも、むちゃくちゃ時間をかけ、そればっかり練習しながらです。物事をちゃんと考えられるようになって立派な社会生活をしているあなたとは状況が違うんですよ。

■ 勉強するしかない

もう既に言語体系を持っている人は、それを捨てるわけにはいきません。ですので、赤ちゃんの学び方は諦めたほうがいいです。英語を身についてたかったらちゃんと勉強しましょう。集中して聞き取る訓練をし、単語をがんばって覚え、何度もしゃべりながらです。スポーツと同じです。とにかく訓練することです。その訓練によってある程度は身につけることができます。もちろん、その度合いは人によって異なりますが、とにかく勉強しなくてはダメです。

■ 聞き流せただけで英語ができるようになった人がいる

中には、聞き流せただけで英語ができるようになったという人がいるかもしれません。でも、違うんですよ。彼らは聞き流しただけじゃないんです。目的意識の強い人は知らず知らずのうちに、集中して聞いてしまうんです。そして知らず知らずのうちに、その英語を口ずさむようになるんですよ。つまり、無意識のうちにめちゃくちゃ訓練しているんです。そもそも訓練なしでは何事も決してうまくいきませんよね。仕事もスポーツも料理も言語も全部同じです。努力しないで身につけられるものなんてないんですよ。