特に大企業のサラリーマンの方ならよくわかると思いますが、けっこうな人が思いつきで、どうでもいい仕事を増やしたりします。それに一生懸命応えるために、いろんな人を巻き込んで、いらない会議やら作業やらが増えます。そういったどうでもいい仕事というのは、僕の肌感覚から言っても相当程度あって、それは仕事の生産性を著しく下げています。

とかく 問題なのは、エライ人からの思いつきの発言で、それをそのまま部下に丸投げするという構図です。そして、まじめな人ほど、それに応えようと一生懸命時間を使うことです。もちろん、そのエライ人にとっても、それを実現しようとする人にとっても、それらは善意による行為です。良かれと思ってやってます。その良かれと思っていることが、会社の生産性を下げているというのがなんとも皮肉なところです。

かつてカエサルはこういってます。地獄への道は善意で舗装されている、と。みんなで一生懸命アイデアをだし、時間をかけて実現させた結果、生産性が下がり会社の業績が悪くなるわけですから、まさに地獄への道をせっせと舗装しているわけです。それも真面目に発言して、真面目にそれを実現しようとしている人たちがです。

僕に言わせると、必要もない仕事をつくったり、それに時間をかけたりすることは、いかにそれが善意によるものであったとしても、それは悪です。ヒマだから何かしようとして、人と時間とカネを使うくらいだったら、なにもしないほうがマシです。何もしないのは給料泥棒ですから、それはそれで悪ですが、生産性を悪化させるよりはずっとマシなんです。

ですので、上司からの仕事の依頼があきらかに意味がない場合、可能であれば、「それはやらないほうがいいと思います。なぜなら~からです。」とちゃんと説明して、それをやめさせましょう。かと言って、ゼロ回答でプッシュバックするのは、なかなか難しいことです。 そこでセカンドベストの策として、誰も巻き込まずやっつけ仕事でぱっぱと終わらせましょう。誰からも褒められないかもしれませんが、実は会社にかなりの貢献をしています。

ある程度組織が大きくなると、官僚機構になり、必然的に余計な仕事が増えていきます。そして、生産性が悪化します。生産性悪化を食い止めるということは、生産性改善させてるのと同じです。よく、”生産性改善プロジェクト”とかやったりしますが、”日常業務で非生産性な仕事を増やさない”ことの方がよっぽど重要なのです。

ところで、なぜこのように生産性を悪化せてしまうような事がおきるのかというと、それは学校教育に問題があるのかもしれません。学校教育ではなんでも全力投球することが賞賛されます。マジメ君がほめられます。そして、マジメ君ほど勉強を頑張って大企業に入ります。

学校では確かになんでも全力投球してもかまいません。ただ、会社は違います。会社ではある程度の生産性を確保しながら利益を生まなくてはならないからです。生産性が悪くなれば、給料がさがるかもしれませんし、あるいはリストラをして従業員をクビにしなければならないかもしれません。場合によっては倒産してみんな路頭に迷ってしまうことになるかもしれません。みんなの幸せのためには、最低限の利益を確保し続けることが重要なのです。

だから、真面目に取り組んだからといって、その結果生産性を下げたとしたら、その人は糾弾されるべきです。会社と学校は違うんです。マジメに先生の言う事をきいてきたエリートほどそういう行動に陥る危険が伴います。サラリーマンたるもの、やっつけ仕事はパパッと終わらせるべきなんです。そして、帰りに一杯やりながら、上司と会社のグチをいう事にこそ時間をかけるべきなんです。